前項では全体で行う『ノック』について説明しましたが、
今回は、さらに実践を意識した練習『シートノック』について説明していきます。
『試合形式のノック』
シートノックは『試合形式のノック』と言われる事もあります。
各ポジションに一人ずつ(稀に二人で交互に行う場合もある)守り、
ピッチャーもマウンドに立ちます。
守備に付かない他の選手は、ランナー役として走塁を主に担いますが、
こちらもただ走るのではなく、試合を意識した走塁を心掛けます。
シートノックでは監督もしくはコーチなどがノッカーとして打席に入ります。
そして、ピッチャーは実際に投球する場合もありますし、
投球のカタチだけをする場合もありますが、その投球に対してノッカーがノックをしていきます。
シートノックではイニング、アウトカウントも数えながら行っていきますので、
キャッチャーは回の始まりに野手に向かって声を掛け、その掛け声とともに始まります。
そして、ランナー役の選手たちはホームベース付近に集まり、
その中からベースコーチ2名も選出し、より実践的に行います。
シートノックのスタート
ここからは、シートノックを行う際の、特に守備側の動きや考え方等について説明していきます。
攻撃側の動きや考え方等については、次回詳しく説明します。
さて、まずは野球の試合でも同じですが、
1回、ノーアウトでランナーは無しの状態からのスタートです。
ノッカーがどこに打つかは分かりませんが、守備をしている選手は自分の所に飛んできたら、
場面に応じてどこに投げるのかといった事を意識して守ります。
そして、ノッカーが打ったと同時に、ランナー役の選手は一塁に走ります。
この時ヒットであれば、走者は打球を見て一塁を回って、
二塁に向かう姿勢を見せる練習にもなります。
逆に守備側はノックで練習した通り、二塁に返球する事になります。
ノーアウト、ランナー一塁の場面
さて、次の場面としてはどうなるでしょうか?
ランナーが一塁に残りますので、ノーアウトでランナー一塁という場面になります。
内野手としては、送りバントに備えた守備をしなければなりませんし、
もしかしたら普通に内野ゴロが来るかもしれません。
外野手は『フライが飛んできたらどうするのか?』
『ゴロでヒットになったら、どこへどんな送球をするのか?』を考えて次のノックを待ちます。
走者としては、『ノッカーがバントをしたら、どうするのか?』
『外野にライナーが飛んだら、どのような対応をするのか?』など、
飛ぶ打球によってあらゆる動きを頭の中でイメージしておきます。
送りバントを打たれたら?
では、実際に送りバントを打たれたとしましょう。
サード、ファーストはバントに応じて前進して捕球しなければなりません。
一方、ショートはもしかしたら捕球したボールを二塁に送球してくる可能性がありますので、
二塁ベースのカバーに入ります。
セカンドは、ファーストが前進してバントの処理をした場合、
一塁ベースががら空きになってしまいます。
よって、セカンドは一塁ベースのカバーに入ります。
ピッチャーはというと、ファーストとサードと同じくバントの処理の為に前に出ますが、
自分がバントの処理をした場合は、二塁が間に合いそうなら、二塁へ送球し、
間に合わないようなら一塁へ送球します。
もし自分が処理せずに、サードが処理をした場合は動きをすると良いでしょうか?
サードが処理したから俺の仕事は終わりではありません。
サードが処理をして、ファーストへ投げた場合、
1塁ランナーはもしかしたら2塁を回って3塁を狙ってくるかもしれません。
その際、三塁ベースには誰もいない状態では、
簡単に進塁させてしまうことになってしまいます。
よって、ピッチャーはサードが処理をした場合は、三塁ベースのカバーに走ります。
もちろんピッチャーやファーストが処理した場合には、
サードは自分が真っ先に三塁ベースに戻り、ランナーの進塁を防ぎます。
内野手の『ベースカバー』
このようにひとつの打球に対してランナーがいる場合は、
打球を処理する、処理しない関係なく、内野手はあらゆる動きを求められます。
その動きの基本となるのが、内野手の場合は『ベースカバー』です。
ベースを常に開けない、野手がベースを守っている限り、
ランナーは簡単にはベースを離れる事は出来ません。
ベースから離れさせない、離れても短い距離であれば、
次の塁への進塁は簡単には出来なくなります。
ボールを持って追いかけるなどといった直接的なプレッシャーでは無くても、
こうした間接的なプレッシャーでも十分に効果があるものなのです。
送りバントを打たれた際の外野手の動き
さて、では外野手の動きはどうでしょうか?
送りバントは内野で起こっている事で、外野手の出る幕は無いのでしょうか?
いやいやそんな事はありません。
外野手だってちゃんと仕事があるんです。
例えば、内野手がバントを処理して、
二塁が間に合いそうだと判断して、二塁に投げたとしましょう。
この場合もしかしたら、内野手が暴投するかもしれません。
もしくはベースカバーに入っているショートが後逸するかもしれません。
この場合、もし外野手がその送球がもし暴投だったら・・・という、
『もし』という考えがあったらどんな動きをするでしょうか?
ズバリ、その送球が暴投だったというイメージでカバーに動く事が出来ますね。
カバーされていれば、仮に暴投だったとしても、
すぐにその送球を拾い、内野手に返球する事で、
2塁から3塁への進塁を食い止める事が出来ると思いますが、
カバーされていなければ3塁に進塁させてしまう可能性もありますし、
最悪、バントをした打者までホームに帰してしまう可能性すら起こってしまいます。
実際に少年野球の試合などではこうしたエラーがホームランになって事がよくあります。
その主な原因はエラーを想定したカバーが出来ていない事なのです。
今回の例で言えば、内野手が処理をしてファーストに投げる場合、
ライトはファーストのカバーに入る事が求められます。
さらに例えば送りバントで2塁に進塁した走者がスキを付いて三塁に向けて走った場合、
ファーストは三塁に投げなければなりません。
この時、レフトはファーストが暴投をするかもしれないという事に気付き、
サードのカバーに走らなければなりません。
もし仮に暴投だったとしても、レフトがしっかりとカバーしていれば走者はホームまでは進む事が出来ません。
逆にカバーしていなければ、ボールは転々と転がり、1点を与えてしまう事になります。
このように、ランナーがいる場合、打球によって、アウトカウントによって、
それぞれのポジションでは打球が飛んでくる、飛んでこない関係なく、求められる動きが出てきます。
シートノックを行う目的
このような動きを身に付ける事を目的として、シートノックを行います。
パターンとしては決められたものに限らず、アドリブでの判断も必要となってくる場合もあったりします。
最初はおそらく動きなんて全く分からないと思いますが、
時間をかけて練習をしていけば必ずそれぞれの動きを理解出来ます。
ボールを捕る、投げる、走る、打つが肉体的トレーニングとすれば、
シートノックなどは頭脳のトレーニングと言っても良いかもしれません。
どれだけ上手に捕球できても、スピードボールを投げても、ホームランを打てても、
この野球の一番難しいと言われているケースバイケースでの動きを熟知しなければ、
良い選手になることは出来ません。
繰り返し、グランドだけではなく自宅などでも学ぶ事が出来ると思いますので、
守るポジションによっての動きをいち早く修得する為に、
イメージトレーニングの習慣を付けるようにしていきましょう。
次回は『シートノック』における走者の目線をお伝えします。