ここからは基礎練習の先で行う応用練習について簡単に紹介します。
基礎練習ではボールを捕る、投げる、打つ、走るといった部分を鍛えていきますが、
それだけでは試合に出て活躍する事は出来ません。
野球のルールを覚えながら、
少しずつ試合をイメージした動きと言うものを覚えていく必要があります。
ノック練習について
基礎練習では、ゴロ捕りやフライを捕る練習として、
ペアでボールを投げ合ったりしながらの練習に加えて、
簡単なノックをグランドの隅などで行う事を紹介してきましたが、
ここで行うノックは、グランドを全面利用して、各ポジションに付いた状態で行います。
但し、ピッチャーだけはポジションには付きません。
もっとも小学生に限らず、ピッチャー=ピッチャーのみという事は稀です。
第二のポジションがある場合がほとんどですので、
そのポジションに入ってノックを受ける事になります。
さて、各ポジションに子どもたちを守らせてのノックですが、
このポジションはほとんどの場合、監督やコーチが決めて指名します。
個人的にここを守らせたい・・・という親の思いがあっても、
それを直訴する事はいけない事ではありませんが、控える事が無難かと思います。
さて、ピッチャーを除く各ポジションに子どもたちが付きますが、
チームによっては高学年のみといった場合や、部員全員でといった場合と様々です。
あまりレベルに差がありすぎると、ノックに入れてもらえない事もあり、
ボール渡し係などになってしまう場合もありますが、
そこはグッと堪えて、早く上手くなるように鼓舞してあげましょう。
ボール渡し係りは最低でも4名ぐらいは必要となってきます。
ボール回し
さあ、それではノックの練習方法について細かく見ていきましょう。
ここでは、まず一般的にはボール回しから始まります。
ホームはキャッチャー、一塁はファースト、二塁はセカンドとショート、三塁はサードと、
それぞれのベースに入るポジションは決まっています。
キャッチャーの掛け声と共に
三塁→二塁→一塁→ホームとボールを回していきます。
一通り回したら、逆回り(一塁→二塁→三塁)に回します。
ボール回しが一通り終わると、いよいよノックが始まります。
内野陣のノック
はじめに、内野陣のノック練習についてです。
外野陣のノック練習についても、後程じっくり説明していきます。
①バックホーム練習
まずは、バックホームの練習です。
ランナーが三塁にいる前提で捕球したゴロをホームで構えるキャッチャーに送球します。
キャッチャーはタッチプレーを前提として、
ランナーが滑り込んでくる事を想定して、タッチの練習をします。
②ファーストへの送球練習
このバックホームを一通り終えると、今度は定位置に戻り、
ノッカーの打つゴロを捕球したらファーストに送球する練習です。
ちなみに、この内野陣がノックを受けている間、
外野陣は一ヶ所に集まり、外野陣専属にノックを打つスタッフがいますので、
ゴロやフライの捕球練習を行います。
さて、では話を内野陣に戻します。
ボールをファーストに送球する練習は、
試合中には最も頻度が高くなるケースであり、
ここでしっかりと捕球→送球のイメージを作り上げます。
少年野球ではサードとショートに関しては、
ほとんどの場合ファーストへの送球はワンバウンドで行います。
よほどボテボテのゴロや前進して捕球した場合には
ノーバウンドで送球する事もありますが、基本はワンバウンドです。
これはまだまだ肩の弱い小学生ということで、
ワンバウンドの方が山なりのボールよりファーストへの到達が速い事、
そしてなにより暴投が減ると言う事で、確実にアウトを取る為と言われています。
しかし、デメリットとしてはグランドには小石がゴロゴロしていますので、
ワンバウンド送球によりイレギュラーしたり、
中途半端なバウンドだとファーストが捕球できない事も出てきたりします。
③ダブルプレー練習
ボールファーストが終わると、次はダブルプレーの練習です。
小学生ですから、なかなかダブルプレーなどは試合で成功する事は稀ですが、
ダブルプレーが取れなくても、セカンドでアウトにするという事を覚える為にも練習では取り入れていきます。
野球の基本として前回話をしておりますが、
攻撃側はひとつでも先の塁に進む為にあらゆる手段を考える、
逆に守る側は一つでも先の塁に進ませないあらゆる手段を考える。
ノックでも、走者を出来るだけ先の塁に進ませないようにイメージした練習をしていきます。
外野陣のノック
ダブルプレーまでの練習が一通り終わると、
次は外野陣を外野の定位置に守らせて、外野のノックを行います。
もちろん外野のノックだから内野は関係ないかと言えばそうではありません。
外野手は捕球したら、まず内野手に返球するという義務がありますし、
外野手が後逸(こういつ)したら、内野手は外野深くまで追いかけて、
送球を受けてしかるべき塁に返球しなければなりません。
これを野球では『中継に入る』と言いますが、
外野陣のノックでは内野手は常に中継として関係してきます。
中継に入る者、ベースに入り返球を受けてランナーにタッチするものと、
外野手の捕球した場所によって、内野手の動きはめまぐるしく変わります。
この動きをマスターするのが案外難しいので、
ノックの際にはこのあたりの動きもしっかりと教えてあげれると良いのですが。
①二塁ベースへの返球練習
外野手は内野手とは逆で、まずノックのボールを捕球したら、二塁ベースに返球します。
これは、外野手の前にヒットでゴロが転がったとします。
打者は一塁を回り、二塁に向かおうとします。
しかし、外野手が捕球後迅速に二塁ベースに返球したら、打者は二塁に進む事が出来ません。
だからといって、捕球しても返球せずにチンタラしていたら、
打者はスキを見て二塁に進塁してしまうかもしれません。
進もうとする打者、止めようとする野手の、大袈裟かもしれませんが、これはせめぎ合いなのです。
よって、外野手はまず捕球→二塁というのが基本となります。
但し例外として、少年野球ではライトは内野手の一人という認識があります。
ライトゴロはあたりまえにアウトにする事ができます。
よって、レフトとセンターに関しては返球は二塁に、ライトは一塁への返球となります。
レフトが二塁に返球する際に、二塁ベースに入るのはセカンドです。
これはレフト方向へのゴロ(ライナー)に対して、
ショートはその打球を追いかけるのが基本です。
守備全般に言える事ですが、打球の飛んだ方向に内野手は動きますので、
その流れの中で、ベースカバーに入るポジションが決まります。
センター方向に打球が飛んだ場合はどうするのか?
では、センター方向に打球が飛んだ場合はどうなるでしょうか?
センターはショートとセカンドから見たら中心です。
どちらがベースカバーに入ったらよいのか迷うところですが、実は意外に簡単なのです。
センター方向の打球に対しては、二塁ベースを中心にして、
ベースよりセカンド寄りの打球ならばショートが、
ベースよりショート寄りであればセカンドがベースカバーに入ります。
よって、例えばベースよりショート寄りのゴロがセンターの方向に抜けて行った場合、
ショートは打球を追いかけた勢いのまま、センターの方向に近寄って行きます。
そして、セカンドは二塁ベースに入ります。
ショートははセンターからの返球を受け取る中継役としてセンターが捕球した位置と、
二塁ベースとの直線上に立ち、返球を受け、二塁ベースにいるセカンドに返球します。
二塁ベース上でボールを持ったセカンドがいる限り、
ヒットを打った打者は一塁から二塁に向かう事は出来ません。
こうして、走者の進塁を止める動きを外野手、内野手共同で行います。
②三塁ベースへの返球練習
さて、話をノックに戻しますが、
外野陣のセカンドへの返球が終わると、次は三塁への送球の練習です。
イメージされる場面としてはランナーが一塁にいる時、
外野にヒット性の打球が飛んだ場合、一塁ランナーは二塁を回って三塁を狙う事が出来ます。
その際、捕球して三塁へ送球する事で、ランナーをアウトにするという練習です。
この際にも、当然ながら中継役として内野手はあらゆる動きを求められます。
レフトに飛んだ場合は基本的にはショートが中継役として入ります。
この時、セカンドは一応二塁ベース付近で待機する事になります。
これには2つの理由があります。
ひとつは二塁を回るランナーがちゃんとベースを踏んだかを確認するため、
もうひとつは、二塁を回ったランナーが途中で止まって戻ろうとした時、
ベースに野手が誰もいなければ送球する事が出来ずに、アウトに出来ないためです。
あらゆる走者の動く可能性を考慮して、
ベースには常に誰がいる事が野球では求められます。
但し、先の塁に進塁してしまった場合は、
進塁前にいたベースを守る必要は一般的には無いと言われています。
例えば、一塁に走者がいる場合、
ファーストは常にベースを気にしながらランナーの動きを警戒しなければなりませんが、
ランナーが、例えば、盗塁をして二塁に進んだ場合には、一塁ベースを守る必要は基本的には無くなります。
ただ、盗塁したランナーが途中で止まって一塁に戻って来ようとした場合は、
まだ進塁が確定していない状態ですので、ファーストはベースを守らなければなりません。
話を戻しますが、三塁には守備側としては極力走者を進塁させたくありません。
エラーでも1点が入ってしまう、守備側にとっては、とてもプレッシャーのかかる場面になるからです。
よって、ノックでの練習でも、
三塁への送球はとにかく『暴投をしない事』を、外野守及び中継に入る内野手は注意して行います。
そして、捕球するサードはどんなボールが来ても体で止めるというガッツが必要です。
自分が後ろにそらしたら1点ですからね。
③バックホームへの送球練習
さて、外野手のノックも2塁へ3塁へと話してきましたが、最後はやはりバックホームです。
外野手の見せ場と言われるバックホーム。
イチロー選手の『レーザービーム』にあこがれる少年も多い事でしょう。
場面としては、ランナー二塁からのヒットや、
ノーアウト、ワンアウト三塁からの、フライによるタッチアップといったところでしょうか。
得点が入るか入らないかの大事な場面ですので、
肩にも力が入ってしまう事でしょうが、力みすぎは禁物です。
低い弾道で、速い送球を心掛ける事が大切です。
ノーバウンドで投げようとして山なりの送球になったりすると、
かえってホームに送球が到達するのが遅くなります。
中継に入る内野手の胸から顔あたりを目がけて投げると、
キャッチャーにワンバウンドで到達する事が多いです。
キャッチャーはタッチしなければなりませんので、求められるのはストライクの送球です。
横にずれたり、頭の上にいったりすれば、それだけタッチが遅くなり、
アウトにする確率も下がってしまいます。
そうした事も意識したうえで、送球をしておくと試合でも良い送球が出来るようになります。
そうして、外野陣がバックホームで良い送球をすれば、
一人ずつ上がっていきます(一本バックとよく言われます)。
挨拶をして終了!
全員が終わると、次は内野陣も同じようにバックホームで一本バックです。
そのあと、キャッチャーフライの練習を数本して、
ノックは大体終わりとなります。
最後に、外野陣、内野陣ともに一列になって、
ノックを打ってくれた監督やコーチに挨拶をして終了です。
次は、より実践をイメージした『シートノック』をお伝えします。